「斜陽」太宰治:著 書評
感想を書くのをしばらく忘れていたため詳しい内容が思い出せないが大まかな内容で伝えようと思う。
「罪と罰」に非常に似た人間の脆さを表している。結核を患った母、アヘン中毒になって戦争から帰還した父、酒に耽っている作家との子供に恋をした主人公が共々に自分の弱さをさらけ出しながら物語は進んだ。
母親は物語の終盤で息を引き取った。主人公は母の死に対してこう語った。
「死んでいく人は美しい。生きるという事。生き残るという事。それは、たいへん醜くて、血の匂いのする、きたならしいことのような気もする。私は、みごもって、穴を掘る蛇の姿を畳の上に思い描いてみた。けれども、私に争って行こう。お母さまのいよいよ亡くなるということが決まると、私のロマンチシズムや感傷が次第に消えて、何か自分が油断のならぬ悪がしこい生き物に変わっていくような気分になった。」
この主人公の感情はタイトルにもある「斜陽」と関わりが大ように思える。
本の終わりで主人公はこう言った。
「けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです。」
ここでいう太陽を道徳と捉えているように感じた。つまり斜陽とは「傾いた道徳」のことであり、非道徳な物語を描いたことになる。主人公の一連の行動はまさに道徳的ではなかったのかもしれない。
この本も相変わらずかなり短い短編小説だ。少しネガティブな人と中央線沿いに関わりのある人は読んでみるといい。ここでいう都会は”荻窪”だ。